コントラバスをマスターする上で、理想的な運指を身につけることがとても重要です。そして、楽譜には運指をどんどんメモしたらよいと考えます。
コントラバスの運指は、指番号(1が人差し指、4が小指、0が開放弦、その他親指マーク)、弦を表す記号(私は開放弦の音名を大文字アルファベットで書く)、そして、ポジション番号があります。そのほか、運指記号とは少し異なりますが、ハーモニクスを表す記号もあります。
さて、原則として、ポジション番号さえ書いてあれば、開放弦を除いて指番号も弦を表す記号も不要なはずなのですが、ポジション番号だけでは直観的に運指が分かりにくいので、実際には指番号を中心に書く人が大半だと思います。
ただ、指番号だけでは、どの弦を押さえるか特定できないこともありますから、必要に応じて弦を表す記号を補助的に使うという方がほとんどだと思います。
私もそのようにしています。
そもそも、コントラバスの場合、ポジション番号に対する統一的な合意がありません。
もっともよく知られているポジションは「ハーフ・ポジション」ではないでしょうか。これは、コントラバスのもっとも低域のポジションで、F・シマンドルなど複数の教則本で採用されています。このハーフ・ポジションとは、その半音上の第1ポジションの半音下に位置します。つまり、これは1/2ポジションということです。第1ポジションの半音上は第2ポジション。その上が、シマンドルの教則本では「第2ポジションと第3ポジションの中間ポジション」などとわけのわからないことが書いてありますが、つまりこれは、2 1/2 ポジションということです。その半音上が第2ポジションです。
このシマンドル式のポジション番号は、中間ポジションがあったりなかったり、非常に分かりにくいですから、これを完全に覚えている人はほとんどいないのではないでしょうか。このような体系を私はダイアトニック・システムと呼んでいます。大雑把にいうならピアノの鍵盤のようなシステムなのですが、初学者ばかりでなく経験者にとっても非常に分かりにくいです。
したがって、私は、コントラバスのポジション番号は、クロマティック・システムを採用しています。シマンドルのハーフ・ポジションのことを第1ポジションと呼び、半音上がるごとに第2ポジション、第3ポジションのように番号が増えていきます。
第1ポジションのちょうど1オクターブ上のポジションは、第13ポジションではなく、私は親指第1ポジションと呼んでいます。つまり、第1〜12までの通常のポジションのほかに、親指ポジションを想定するのです。親指第1〜12ポジションは、通常の第1〜12ポジションのちょうどオクターブ上に相当します。分かりやすいでしょう? 親指ポジションが何ポジションまであるかは楽器の個体差にもよります。私の楽器は親指第15ポジションまで指板がついています。
さて、通常ポジションと親指ポジションで、同じ番号があるのは紛らわしいと感じる方もいるかもしれません。私は、譜面にポジション番号を書くときに、通常のポジションはI〜XIIの大文字のローマ数字で、親指ポジションは小文字のローマ数字で書くようにしています。
ところで、なぜポジション番号なのでしょうか。
私がポジション番号が重要だと考えるようになったきっかけは、コントラバスのレッスンをしていたときです。
初学者のうちから私のレッスンを受けている生徒はそれほど問題にならないのですが、ある程度の期間、独学でこの楽器を学んだ方のなかには、シフト(ポジション移動)が適切にできていない方が一定割合でいらっしゃいます。一時的な指の拡張を無意識でおこなっていたり、シフトの前後のイメージが曖昧なまま演奏していたりというような問題を抱えているケースが少なからず見受けられます。
例えば、半音シフト・アップするとき、もとのポジションの第2指、第4指だったところに、第1指、第2指を持ってくる必要があるのですが、このようなイメージを描けていない方もいらっしゃいます。
そこで、運指を指導する際にポジション番号を積極的に導入することにしました。シフトの前後のポジション番号を比較すれば、どれだけシフトしたらよいか、引き算すれば分かります。そうすることで、自覚的なシフトを習慣化に多少は役立っているように実感しています。これは、シマンドル式のダイアトニック・システムのポジション番号では達成できないことで、クロマティック・システムのメリットでもあります。
クロマティック・システムの通常ポジションでは、第1指の「フレット」の番号がポジション番号に対応しますから、エレクトリック・ベースの演奏経験のある方は、比較的スムーズに理解できるようです。一方、私はこれまでポジション番号をほとんど意識せずにきたので、いまだにしばらく立ち止まって考えないとポジション番号がわからないことのほうが多いくらいです。