コスパ(コスト・パフォーマンス)という言葉がありますが、数年くらい前からタイパ(タイム・パフォーマンス)という言葉も目立つようになってきたように感じます。

ベースやアンサンブルの上達、あるいは、ジャズ理論の学習に関して、コスパやタイパを重視して行動している人も少なくないと思います。今回は、このようなことについて考えてみたいと思います。

コスパ

以前、レコードやCDを買ったり、ジャズ・クラブやコンサート会場でライブ演奏を楽しんだりしていたのが、現在では定額の音楽サブスクリプションや場合によっては無料で視聴できるようになっています。

それに、以前はそれぞれの楽器の先生についてレッスンを受けるか、あるいは教則本を買って自学自習していたものが、現在では無料でレッスンや解説の動画を視聴することができます。外国語の解説も日本語に翻訳してくれるようになり、その精度も年々あがっている印象を受けます。

これまで、それなりの費用をかけていたものを、ネット上の無料あるいは低額のコンテンツに置き換えることができるようになったという意味で、コストをそれほどかけずに上達できるようになったといえると思います。

ただ、どちらかといえばコスパよりもタイパに関わることかもしれないのですが、無料コンテンツの視聴でどれだけスキルアップにつながっているか、しっかり検証する必要があります。以前も書きましたが、自分が理解できる範囲か、それより少しだけ手の届きそうなレベルの動画を、ただ「つまみ食い」して堂々巡りしているようであれば、「やっている気」になっている割に、実際のところそれほど実力がついていないという状況あるのでは、と思います。

もちろんなかには無料視聴できる教材で着実にスキルアップできている方も少なくないでしょう。しかし、そういう人はほんのひとにぎりであって、私の肌感覚では1割にも満たないと思われます。

「上手い人」とは「練習(取り組み)の仕方が上手な人」だと私は考えています。具体的にある程度成果をあげている人とは、過去にかなり真剣にほかの楽器やスポーツなどの実技に向き合った期間が一定期間あり、トレーニングの習慣や方法論、身体の動かし方についての基本的な知識や経験が身についている方に限られるようにお見受けします。しかも、自身がかつて取り組んだ楽器やスポーツなどの技能レベル程度に上達してからは大きく伸び悩みます。

例えば、中学高校の6年間でテニスに取り組んで地方大会を突破する程度の実力をつけた経験がある方は、楽器やジャズに取り組み始めてから概ね5、6年くらいまではその経験を生かしてある程度順調に上達できたとしても、それ以上になると途端に頭打ちになる人が多いようです。

もちろん、無駄な出費をする必要はないのですが、必要な出費については惜しまず、演奏会場に足を運んだりレッスンを受けたりすることが上達にとっては必要だと考えます。

それから、最近気になるのは、楽器のメンテナンス費用の支出を惜しむ人が多いことです。

去年、久しぶりに母校の大学のベース・パートから楽器のメンテナンスについて相談を受けたのでいってみたのですが、弦は数年ぶりに変えたばかり、その他も不調になるまでほとんどメンテナンスがされていないというのです。その上、サブ楽器でよいのでコンテスト用にベースを貸してくれる人を紹介してもらえませんか、というのです(私はコントラバスを1台しか所有していません)。

そもそもメンテナンスさえできない人たちにサブとはいえ大切な楽器を貸してほしいというような無責任な依頼はできませんのでお断りしました。それでも、いちおう先輩なのでメンテナンスについての基本的な知識を伝えて、関連書籍数冊も紹介しました。

それでも、予算がないだの、費用がもったいないだのといって、3台あるうち1台分しか弦を交換するつもりはないようでした。

確かに、こんにちの学生の経済状況は厳しいですし(私もそうだったので分かります)、私は、ジャズや音楽が経済的に裕福な人たちだけの趣味であるべきではないと考えています。それでも、最低限のメンテナンス費用さえ出し渋る姿勢には心底がっかりしました。正直に申し上げて、こういう人たちは楽器や音楽が上達する素質はゼロだと思います。厳しいようですが、必要最低限の支出を惜しむ人は、どのような趣味や仕事でも成功はしないと思います。

タイパ

結論からいえば、タイパを重視するのであればコストをかけよう、ということです。結果的にコスパもよくなるということです。

たとえば、楽器の上達に関して、はやく上達したいのであれば今すぐ先生探しを始めて一日も早くにレッスンを受けるべきです。

理由は簡単です。

まず、あなたがたとえ他の楽器で音楽経験があってもその楽器の初心者であれば、フィジカルなスキルを効率よく学ぶことができるからです(つまりタイパがよい)。演奏方法は書籍や一方的な動画コンテンツでの説明が難しく、また自分の理解度に応じて誤解をするリスクをゼロにすることは困難です。また、どの程度できたら達成したとみなすかの自己判断も難しいといえます。

もしあなたの楽器経験がながければ長いほどレッスンを受ける緊急度は高いといます。初心者であれば新たな技術を習得するだけなのでよいですが、経験者の場合、今まで身についてしまった悪い癖を直して適切な奏法を身につける必要があります。これは、未経験者に対して倍かそれ以上の時間がかかります。精神的な負担はそれ以上です。独習(敢えていれば我流)の時間が長ければ長いほど、適切な奏法を身につけるための時間的精神的負担はどんどん大きくなっていきます。

コントラバスの場合、見直しをすべき項目はたくさんあります。フィジカルなことに加えて、運指の問題もありますし、ベースラインとコードやテンションの関係を曖昧なまま弾いている方もアマチュアの方のなかには多く見られます。それが、ソロのステップ・アップの大きな障害となっていることを自覚しているかたはどれくらいいるでしょうか。

すでに「コスパ」の節でも書いたように、独学での学習や、無料動画の視聴では、自分の関心のある分野や実力+α程度のスキルアップに限られます。

例えば、算数の学習では頭のやわらかい小学2年生のうちに九九を暗記させます。正直なところ小学校低学年の日常生活で掛け算の必要性は高くないでしょう。しかし、長期的に人生全体を見通したときに、この時期を逃すと掛け算に関係する様々なこと(仕事だけでなく、買い物や遊びなど)に悪影響が及ぶと考えられます。

ベースの習得にもこのような中期的、長期的な練習計画が必要だと考えるのですが、独学で演奏される方は、短期的なものも含めてきちんとした練習計画を立てて、長年にわたって着実に成果をあげ続けているかたは、どれくらいいらっしゃるでしょうか。

独学を続けた場合と、当初からレッスンを受けていた場合、それから、今からレッスンを受けた場合の成長曲線を思い描いていただければ、レッスンをすぐに受けない理由は見当たらないのでは、と思います。

まとめ

このように書くと、自分のレッスンの宣伝と受け取られるかもしれません。

確かに、私はオンラインのレッスンも行っていて、全国(一部海外在住の日本人)の指導経験があります。しかし、近くに指導者がいるある程度の都市部にお住まいの方は、ぜひ、お住まいの地域の信頼できるプレイヤーのレッスンを受けることをおすすめします。

私は名古屋在住ですが、この地域には私以外にも信頼できる優れたベーシストがいらっしゃいます。指導者と学習者の間には、相性のようなものもあるかと思うので、自分にぴったりな指導者に出会えることがコスパとタイパにつながると思います。